虫採り


私が生まれた東京のM市は悲惨なくらい酷い所でしたが、 ほんの少しの救いとして自宅近くにかつての里山の名残らしき雑木林がありました。 夏休はその雑木林での虫採りの毎日で、 カナブン、カミキリムシ、コクワガタ、運が良ければノコギリクワガタなどが採れたものです。 しかしそこにはカブトムシがいなくて、 帰省したときに採ったというカブトムシを友人に自慢されて とても悔しい思いをした事が山の中に移住する動機の一部であることは間違いありません。 で、山の中に引越したからにはさっそくカブトムシ採りに出発です。


引越してきてから間もない頃、水道管の補修に来ていただいた方から ここらにはカブトムシなんて嫌になるほどいると聞かされ、 とても期待していたのですが、 そろそろ梅雨も終わるというのにカブトムシやクワガタの気配さえありません。 ちょっとがっかりしていた時についにウッドデッキ手すりにこいつを見つけました。 ちっちゃなコクワガタのメスのようです。 やっぱりいるんだと思い、明日からのカブクワ探索を決意しました。
目指すは樹液がだらだら出て虫がうじゃうじゃ集まるクヌギ、俗に言う樹液酒場です。 まずは自分のうちのクヌギをすべて探してみました。 ほんの少し樹液が出てシミになっているのが1本だけありましたが、まったく虫がいません。 捜索範囲を広げてみても樹液を出しているものは少なく、 ほとんどが電柱クヌギと呼ばれる面白くもないものばかりです。 それでもやっとのこと写真のように樹液を垂れ流しているクヌギを見つけたのですが、 やはり虫はまったくいませんでした。 カナブン、ヒカゲチョウ、オオムラサキ、スズメバチなどの樹液に集まる昆虫が 飛んでいるのを良く見かけるのに、どういう事なんでしょうか?
なんと自宅のサンダルの中でカブトムシのメスが... ここらにカブトムシがいる事は分かりましたが、いったい樹液酒場はどこに?
うじゃうじゃとはいきませんが虫の集まる木を見つけました。 田んぼへ通じる小径わきのわりと小さなクヌギです。 この木は樹液を出していないにも関わらず多くの虫が齧り付き、 木の表面には虫が齧った痕がたくさんあります。 似たような木はほかにいくらでもあるのですが、このようなのはこの1本だけです。 カナブンなんて場所取りで喧嘩をするくらいこの木は美味しいみたいです。 訳が分かりませんが、どうもここいらは私が親しんだ武蔵野の里山とはだいぶ勝手が違うようです。
自宅でカナブンが飛び回っているのを見て、 もしかしたら近くに樹液酒場があるのではと思い、 どの木に止まるのか追いかけてみました。 するとすべてのカナブンはなんと我が家のシラカバに集まって行くではないですか。
そのシラカバには多くの虫たちが集まり、争うように木に齧り付いて樹液をすすっています。 まさに灯台下暗し!
ちっちゃいですがコクワのペアもいます。 シラカバにはカブクワはいないと聞いていましたが、 どういうことなんでしょうか? Wikipediaで調べるとシラカバの樹液はガムのCMで有名になった 甘味料のキシリトールの原料となるそうです。 とにかく想像していたのとは違いますが、これはもう樹液酒場と言っても良さそうです。
先日見つけた虫の集まるクヌギに行くとカブトムシ♂が2匹いるではないですか。 さっそくゲットです。
ゲットしたカブト♂を我が家のシラカバに放したところ結構気に入ってもらえたようで、 今のところ逃げる事なく住み着いています。 おかげさまで気が向けばいつでもカブトムシを眺める事ができます。 ただクヌギと違って木の表面がすべるので移動する際にすべって木から落ちてしまう事があり、 飛ぶのが得意でない大型のカブクワにはちょっと難儀なようです。
カブトムシに関してはとりあえずの成果を得られましたが、 次はクワガタ、特にミヤマクワガタに会いたいと思います。 またできることなら大きなクヌギの樹液酒場を見つけ出したいです。 道路沿いのクヌギは大体見たので、次は山の中を探すしかなさそうです。
写真の場所は以前目撃したカモシカ親子とシカの群れがいた場所で、 最近人が歩いた形跡がないが獣の足跡がたくさんあるという森の中です。
森に入るとさっそく穴ぼこだらけのクヌギに出会いました。 予想どおり穴の中にはクワガタがいっぱいいます。 木を眺めていると上の方に大きめのクワガタが歩いているのを見つけて即ゲットです。 そいつは待望のミヤマクワガタでした。幸先良いスタートです。
虫の集まる木を何本か見つけましたがやはりこんな感じで 樹液酒場と呼べるようなものではありません。 もしかしたらここらへんはクヌギがたくさんあるので 1カ所に大量に集まって争う必要がないということでしょうか?
ちっちゃなミヤマペアを発見! この後交尾を始めましたのでこのままにしておきましょう。
樹液を出していて虫が齧った痕がたくさんある樹液酒場に近い木を見つけました。 良く見ると、いたっ、いました。 こいつはでかい!! 記録では最大のミヤマクワガタは83mmだそうですが、 もしかしたらその記録を超えるかもしれません。 ミヤマは既に1匹ゲットしているし、 このヌシのようなやつをこのままそっとしておいてやろうという思いと、 もし記録を塗り替えるとしたら相当自慢できるなという下世話な気持が葛藤している隙に このミヤマは姿を消していました。 写真を撮った時に危険を感じたのでしょう。 木の下の腐葉土に隠れたらしく、もう見つかりません。
採ってきたミヤマクワガタをさっそく自宅のシラカバに放しました。 とりあえず気に入っていただけたようです。 カナブンや蝶を蹴散らして懸命に樹液を吸っています。
嫌になるほどうじゃうじゃとはいきませんでしたが、 カブトムシにもクワガタにも逢えて非常に満足しています。 次の目標として我が家の庭にカブクワが集まるクヌギ中心の広葉樹の森を育てようと思います。