山神様

これも山梨県某所でのことです。
午後7時を過ぎた頃でしょうか、 あたりはすっかり暗くなってきて私は夏の黄昏時を楽しんでいました。
家の前の道はカーブになっているために山方面の先はブラインドになっています。 その道を山の上の方からかなりの速さで走り下りてくる動物の足音が聞こえました。 足音から察するに中型犬のようです。
遊びに出ていた農家の飼い犬が家に帰るのかなと思って眺めていましたが、 足跡がカーブを過ぎてそいつの姿が見えるかと思った瞬間、 足音と風を切る音だけが目の前をもの凄いスピードで通り過ぎて行ったのです。
不思議なものを見た(?)なと、その時は思ったものでした。
それから10年程後、再び私はその場所に遊びに行きました。 もう電気も引かれていて近所には2件程定住されている方もおり、 昔のように夜中に正体不明の足音が聞こえるなんてこともありません。
村の神社ではお祭りが行われていました。 果物を持ってきて頂いた農家のおじさんにお茶を出して訪ねてみました。
「お祭りなんですね。初めて見ましたよ。」
「若いもんがみんな東京に出て行っちゃってずっと祭はやってなかったからな。 そしたら山神様が怒って村で死人が次から次に出たもんだからまた祭をやるようになったんだ。 たしか10年くらい前のことだったな。 あの神社も本当の神社じゃなくて、本当の神社はこの道をまっすぐ登ったところにあったんだ。 神主が山を登るのが大変だからと言って...」
もちろん私は10年前のあの不思議な体験を思い出していました。